各年度運動方針
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 平成16年度 運動方針

はじめに
 

特別措置法の失効から2年が過ぎ、地方公共団体では担当部署や名称を同和から人権に変更しているが、私ども自由同和会としては、同和行政から同和問題の解決を柱とする人権行政の確立へとの提唱からすけば、歓迎したい傾向ではあるが、名称の変更とともに同和対策が蔑ろになっていないかをチェックすることが肝要である。
 その際に、同和対策がなおざりになっていた場合には、その姿勢を正す活動を集中的に展開する。

 1996年の「地対協」意見具申にも、「部落差別が現存するかぎりこの行政は積極的に推進されなければならない」とし
、「特別対策の終了、すなわち一般対策への移行が、同和問題の早期解決を目指す取組の放棄を意味するものでないこと言うまでもない。

 一般対策移行後は、従来にも増して、行政が基本的人権の尊重という目標をしっかりと見据え、一部に立ち遅れのあることも視野に入れながら、地域の状況や事業の必要性の的確な把握に努め、真摯に施策を実施していく主体的な姿勢が求められる」としている。
これは、法失効後に地方公共団体の中には、同和問題の解決をするための施策を放棄するところも出てくることを予期して、「地対協」が機先を制したものである。

 今一度、自分が住む地域を点検し、不備なものがないか確認し、不備なものがあれば臆することなく、その改善を地方公共団体へ求めていく。

 国においては、これまでは各省庁が実施する同和対策を総合的に調整するために、総務省の中に地域改善対策室が設置してあったが、法の失効とともに、一般対策への移行から廃止され、現在は法務省人権擁護局内に同和問題を担当する人権擁護調整官が配置されているものの、法務省では総合調整機能はなく、これまでと同等の調整機能は期待できない。 

  よって、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律に則り策定された「人権教育・啓発に関する基本計画」に定める人権課題(同和問題、女性、子ども、高齢者、障害者、アイヌの人々、外国人、HIV関係者・ハンセン病患者等、刑を終えて出所した人、犯罪被害者、インターネットによる人権侵害、性的指向者)を人権施策としてまとめ、総合的に推進するために、各省庁の連絡調整を総合的に行う部署を、総合調整機能をもつ内閣府に設置するよう求めていく。 

  また、人権侵害の処理と被害者の救済を図る国家行政組織法の第3条委員会としての「人権委員会」の設置については、「人権擁護法案」の廃案を受け、新たに「人権侵害の救済に関する法律」(仮称)が制定されるよう、積極的に取り組む。 

  その他として、男女共同参画社会基本法により、都道府県には国と同様に男女共同参画社会を促進するため、基本計画の策定が義務付けられているが、市町村については基本計画の策定は努力義務になっているため、策定している市町村が少ないので、策定していない市町村に、基本計画の策定を求めていく。

1. 住環境整備
  住環境整備については、近隣地域との差異がないかを点検しつつも、高齢者や障害者が自由に社会に参加できる活力ある地域にするため、バリアフリーを中心にする「人権のまちづくり」を視野に入れた取組みをも展開し、ノーマライゼーションを達成する。 地域の拠点になる隣保館については、バリアフリー化への改修費補助があるので積極的に活用していく。
 バリアフリーの基準としては、介助がない車イスでどこへでも自由に、安心・安全・快適に移動できるものとする。

 建築物のバリアフリーについては、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律」(通称、ハートビル法)が平成15年に改正され、特定建築物の範囲が拡大されたので、この「ハートビル法」を積極的に活用してバリアフリーの建築物を増やしていく。(「ハートビル法」では、地方公共団体や国庫からの補助がある) 老朽した改良住宅・公営住宅の立替えを行う際については、定期借地権なども考慮しつつ、払い下げも視野に入れ検討し、これを機会に「人権のまちづくり」を具現化する総合計画の策定を市町村に求めていく。

 また、政府の三位一体の改革から、地域の拠点である隣保館の運営費や施設整備費も削減されていく可能性も否定できないことから、隣保館の同和問題をはじめとするあらゆる人権問題の解決に果たす役割の大きさを訴え、削減ではなく、拡充を厚生労働省に求めていくとともに、地方公共団体へも隣保館の活性化を求めていく。
2. 産業基盤の確立と就労対策
  自立を図るには、自営業者は経営基盤の確立が、勤労者は就労の安定が必要不可欠であるが、昨今では、長引く不況から倒産やリストラに伴う中高年の未就労や若年層のフリーターなど、未就労や不安定就労増えている。

 この現象は同和地区固有の現象ではないが、同和地区の人々も例外ではなく、元来から厳しい経営状況・雇用状況にあったものが、不況が更に追い討ちをかけているのが実情である。

 この現状を打破し、自立を促進していくため、自営業者には政府が中小・零細業者向けセーフティネットとして実施している各種融資制度の有効活用を図っていく。  未就労者に関しては、ハローワークを最大限活用するとともに、規制の緩和により都道府県も就労の斡旋ができるようになったので、都道府県と連携を図り、未就労をなくしていく。また、専門性を取得するために職業訓練や研修・講座などを有効
活用し、就労を確保していく。

 特に、世界でも類のない高齢者社会に進んでいるため、介護福祉士やホームヘルパーが不足しているため、求人の需要が非常に高いので資格の取得を奨励していく。
 同和地区に多数現存する土木建築業者については、合理化や近代化を促進するとともに、生き残りのため共同化や協業化を進めていく。

 農林漁業者については、付加価値の高いものに移行するとともに、ブランド化を目指し、インターネットなどを活用して販路の拡大を図る。  いずれにしても、情報化の時代といわれるように、最新の情報が生死を分けるといっても過言ではない中、都府県本部内に相談業務を確立していく。また、就職差別をなくすため、ILO第111号条約の「雇用及び職業における差別に関する条約」を批准し、国内法を整備するよう厚生労働省に求めていく。
3.教育・啓発
    教育・啓発については、「人権教育のための国連10年」が本年で終了するが、国内的には、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が既に制定されており、基本計画も策定実施されているので、「人権教育のための国連10年」が終了しても何ら支障は生じないが、国際的に見れば、国内行動計画の策定が進んでおらず、真に人権教育が必要な国においても同様の状況からすれば、今後も「人権教育のための国連10年」は続けていく必要があると思われるので、引き続き「人権教育のための国連10年」を国連が行うよう政府に要請していく。
 但し、国内的には「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が施行されており、この法律に則り「人権教育・啓発に関する基本計画」が策定実施されているので、この法律を有効活用し、すべての都道府県、すべての市町村に、この基本計画の策定と実施を求めていく。
  また、基本計画には企業の役割も明記されていることから、厚生労働省が100名以上の従業員を有する企業に設置を求めている「公正採用選考人権啓発推進員」との連携を深め、企業内の人権研修の充実に努めていくとともに、未設置の企業には、推進員の設置を求めていく。

 奨学資金を扱う日本育英会の独立行政法人化で、高等学校の奨学資金は、私どもの運動で創設された奨学資金と一元化され、都道府県の裁量に委ねることになっているが、私どもの運動で創設された奨学資金は学力要件がなく誰もが貸与される。しかし、育英会の奨学資金は学力要件があり、成績が優秀な者しか借りられないので、一元化によって学力要件を持ち出さないよう政府や都道府県に要請していくとともに、専門学校については対象外になっているので、対象に加えるよう要請していく。

  また、すべての学校がバリアフリー化され、車イスでも通学できるよう、文部科学省にバリアフリーの促進を求めていくと同時に、児童・生徒の人権を侵害する教師の差別言動が少なからず発生していることから、教師に対する人権研修の徹底をも求めていく。

 今後、小・中学校では、地域に開かれた学校を目指すとして、学校評議員制度など保護者が学校運営に直接関与できるようになるので、積極的に関与していく。
 特に、カリュキュラムには、最大限の関心を持ち、人権教育が計画的に実施されるよう働きかける。
4.権侵害の処理及び被害者の救済
   人権侵害の処理及び被害者の救済については、私ども自由同和会が求めていた、国家行政組織法の第3条委員会としての「人権委員会」の設置を含む「人権擁護法案」が国会に上程されたが、野党との合意ができないまま衆議院の解散から、審議未了で廃案になった。

 国家行政組織法の第3条委員会としての「人権委員会」の創設は、私ども自由同和会を結成して以来の悲願であるので、再出発を図り、是が非でも成立を図らなければならない。
 今国会には、はじめの箇所で記述したように上程されないが、秋に開催されるであろう臨時国会へ向け、「人権侵害の救済に関する法律案」(仮称)が上程されるよう取組みを強化する。

 「人権委員会」が創設されるまでは、本年の3月に20年ぶりに改正された「人権侵犯事件調査処理規程」での対応になるが、差別での泣き寝入りは絶対にさせないという強い気持ちで、「人権侵犯事件調査処理規程」を有効に活用し救済を図っていく。
最後に
 
 今年になって、「児童虐待防止法」や「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(「DV防止法」DVとはドメスティック・バイオレンスの略)が相次いで改正されたが、「人権擁護法案」が成立していたならば、どちらの虐待も「人権委員会」の特別救済の対象であったことを思えば、誠に残念である。

 同和問題以外の人権侵害や虐待については法の整備が進み、「人権侵害の救済に関する法律案」が成立しなければ、同和問題だけが置き去りにされる可能性は否定できない状況にあるので、一日も早く「人権侵害の救済に関する法律案」(仮称)が国会に上程され成立を期するため、あらゆる手段を講じる。

 
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