各年度運動方針
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平成15年度



 令和5年度 運動方針


昨年は、大正11年3月に創立され激しい糾弾闘争を繰り返し「部落」は怖いという思いを社会にまき散らして、第二次世界大戦下に消滅した全国水平社の流れを汲む「部落解放同盟」が、創立100年のこの機会を最大限に活用しての条例化に拍車を掛けたことで、相当数の地方公共団体からの問い合わせや相談が相次いだ。
その大半は、自由同和会はなぜ条例化に反対するのかというもので、返答としては「同和問題(部落問題)は、解決の最大の壁であった結婚差別も長きに渡っての人権教育・啓発により理解が進み大きく前進していて、既に最終段階を迎えているのが現状であると判断している。時計の針を戻すような部落問題に特化した内容や地区を再指定する必要がある部落の実態調査を含むものについて反対しているもので、あらゆる人権問題の解決のための条例には反対はしていない」と述べると、人権であれば許容されることを知り安心するようだが、続けて、5年以内の結婚差別や就職差別の有無を尋ねれば、言葉に詰まる。



何のため、誰のための条例化なのか、大いに疑問を残すところである。
部落解放同盟の条例化の柱は、平成28年12月に成立した「部落差別解消法」に私どもの反対から、「部落」の実態調査ではなく、「部落差別」の実態調査になったことで、条例化する中に「部落」の実態調査を組み入れることだと判断し、平成30年5月に開催した第33回全国大会で、条例化には反対の決議をした。
その理由として、@旧同和関係者だけを優遇すれば、市民感情を悪化させ、解決の過程にある同和問題の早期解決を妨げること。A部落の実態調査は、旧同和地区を再指定することになり、部落の固定化につながること。B混住が進んでいる中、実態調査のために旧同和関係者を選別することは、地域の中で平穏に暮らしている人たちに分断を持ち込むことになり、さらに、アウティングになることである。

また、「部落差別解消法」の附帯決議にも、「部落差別の実態に係る調査を実施するに当たっては、当該調査により新たな差別を生むことがないように留意しつつ、それが真に部落差別の解消に資するものとなるよう、その内容、手法等について慎重に検討すること」としていることを再確認し、今後も条例化については反対していく。
このところ部落解放同盟は、「差別禁止法」の制定を目論んでいる。差別や人権侵害をした人に反省を促すことも大事だが、もっと大事なことは糾弾することではなく、被害者の救済であり、そのための「人権擁護法案」の成立である。「自由同和会」、「部落解放同盟」、(公社)「全国人権教育研究協議会」、「全国隣保館連絡協議会」の4団体で結成した「人権会議」、(平成3年2月に結成した「同和問題の現状を考える連絡会議」を改名)は「人権擁護法案」の内容に齟齬をきたし休眠状態になっているが、簡易・迅速・柔軟に人権救済ができる国家行政組織法の第3条機関としての「人権委員会」を中心とする、「人権擁護法案」を国民から理解される法案に見直し、成立のために、再度、「人権会議」として活動することを視野に入れた活動を行う。
「障害者差別解消法」は、平成18年12月に国連総会で採択され、平成20年5月に発効した条約を批准するために平成25年6月に制定されたもので、「差別的取り扱いの禁止」と「合理的配慮の不提供の禁止」を定めたものであり、これまで努力義務であった民間事業者の「合理的配慮の提供」は令和3年5月に改正され、国や地方公共団体等と同様に令和6年4月1日から義務(車いす利用者のスロープを店舗の出入り口に設置等)になるので、会員の事業者に過重な負担がない範囲で社会的障壁を取り除く配慮を行うよう指導するとともに、事業者に対して合理的配慮を求めていく。
同法第6条に規定する「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」は平成27年の2月に策定公表され、各省庁においても「国等職員対応要領」と「事業者のための対応指針」が作成された後、平成28年4月から施行された。地方公共団体についても、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策の策定と実施を求めるとともに、「職員対応要領」の策定を求めている。大半の地方公共団体は策定済みだが、一部の市町村に遅れがあることから策定を急がせていく。
また、障害を理由とする差別に関する相談や紛争の防止及び解決を図ることと、差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うために「障害者差別解消支援地域協議会」の設置を求めているが、都道府県・指定都市は大半が設置済みだが市区町村は大幅に遅れていることから、この「協議会」が早期に設置されるよう市区町村に求めていく。_
本年の3月14日には、この「基本方針」の改定と「第5次障害者基本計画」(令和5年度〜令和9年度)も閣議決定されているので、会員に熟読するよう促していく。
なお、洪水や高潮、津波が発生した場合に備える「水害ハザードマップ」は大半の市町村で作成済みだが、点字や音声を使用した目や耳が不自由な障害者向けの「水害ハザードマップ」の作成が大幅に遅れているので、市町村に作成を要請する。

障害者の雇用については、平成30年4月から精神障害者の雇用が義務付けられたことで法定雇用率は、国と都道府県は2.3%から2.5%、教育委員会は2.2%から2.4%になったが、令和3年の3月からは国と都道府県は2.5%から2.6%に、都道府県の教育委員会は2.4%から2.5%に引き上げられた。平成30年に発覚した国や地方公共団体などが障害者の定義を拡大解釈しての水増し雇用については早期に改善が図られた。令和4年6月時点での国の雇用は前年の9,605.0人から9,703.0人で、前年の2.83%から2.85%に、都道府県では前年の10,143.5人から10,409.0人で、前年の2.81%から2.86%に、市町村では前年の33,369.5人から34,535.5人で、前年の2.51%から2.57%に、教育委員会では前年の16,106.5人から16,501.0人で、2.21%から2.27%になっているが、非常勤が多いので常勤雇用を増やすよう国や地方公共団体に求めていく。

民間企業でも、令和3年3月1日から法定雇用率(2.2%→2.3%、対象企業を従業員数45.5人以上から43.5人以上に拡大)が引き上げられた。令和4年6月1日時点での雇用数や実雇用率は2.25%で対前年比0.05ポイント上昇していて、雇用障害者数も実雇用率も過去最多を更新で、雇用障害者全体では613,958.0人(その内訳、身体障害者は対前年比0.4%減の357,767.5人、知的障害者は4.1%増の146,426.0人、精神障害者は11.9%増の109,765.5人)で対前年2.7%増の16,172.0人の増になっているが、法定雇用率の達成企業の割合は対前年比1.3ポイントの上昇の48.3%で、半数以上の企業が達成していないので未達成企業に雇用の促進を強力に求めていく。
なお、令和6年4月からは2.3%→2.5%(40.0人以上)、令和8年7月からは2,5%→ 2.7%(37.5人以上)に引き上げられる。

また、厚生労働省は「障害者の雇用の促進に関する法律」を平成25年6月に改正し、この改正に基づき、「障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」と「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」を平成27年3月に策定している。
この指針も平成28年4月から施行されており、この指針では、募集採用時や採用後での差別禁止や合理的配慮を定めているので、この指針が守られているかの点検も併せて行っていく。
更に、平成30年に発覚した障害者の定義の拡大解釈による国や地方公共団体の水増し雇用の反省から、令和元年にも「障害者の雇用の促進等に関する法律」は改正され、国及び地方公共団体での一層の雇用の促進と「障害者活躍推進計画作成指針」の策定とこの指針に即した「障害者活躍推進計画」の作成並びに「障害者雇用推進者」と「障害者職業生活相談員」の選任を義務付けたので、「障害者活躍推進計画」に基づく取り組みの実施状況を注視する。
令和2年4月より、障害者雇用に積極的に取り組む優良中小企業を認定する「もにす認定制度」が実施されているので、認定されるよう会員の事業者を指導していく。

ノーマライゼーション(共生社会)の観点からのインクルーシブ教育(特定の個人・集団を排除せず学習活動への参加を平等に保障する)システムの推進として、都道府県が特別支援学校における自立活動の充実を図るため、医療的ケアのための看護師は3,000人→ 3,740人の配置、また、特別な支援を必要とする子供への就学前から学齢期、社会参加までの切れ目ない支援体制整備、外部専門家設置(284百万円→180百万円、専門家348人)、学校における交流及び共同学習を通じて障害者を理解するため、「心のバリアフリーノート」(小学生用、中高生徒用)を活用して、心のバリアフリーを促進するなど、「障害者差別解消法」の施行を踏まえ、特別支援教育の充実に向けた予算は増額しているが、更なる予算の拡充を文部科学省に求めていく。
特別支援教育としての新たな施策として、すべての新規採用教員を10年以内に2年以上、特別支援学級や特別支援校で経験させるよう全教委に通知したが、努力義務なので必須にするよう市町村教委に要請していく。 また、昨今、特別支援校へ通学する児童生徒が増えていることで教室の過不足を調査した結果、3,740教室(令和3年10月1日現在)が不足していることが確認されたことで、設備に対する補助率を上げるなど、教室不足の解消を促しているので、都府県教委や市町村教委にインクルーシブ教育を増やすか特別支援校の新設及び増築で教室を増やすよう要請する。「医療的ケア児支援法」が令和3年6月に成立したことで、特別支援校だけではなく地域の学校への通学が増えてくると思われるので、看護師等の配置について学校からの要請に応じられるよう市町村に働きかける。 なお、特別支援校には設置基準がなかったが、設置基準が初めて設けられ、令和4年4月から施行されるので、この基準を参考に見直すよう併せて要請していく。
本年4月から施行される改正バリアフリー法では、市町村での「基本構想」の策定、「心のバリアフリー」の推進が義務化され、また、特別特定建築物に公立の小・中学校が追加されたので、車いす使用者用のトイレやエレベーターの設置などバリアフリー化を市町村に求めていくが、新改築に限られ既存の校舎は対象外であったが、本年の3月に閣議決定された「第5次障害者基本計画」で令和7年までにすべての公立小中学校でのバリアフリー化を目標に掲げたので、その実施を市町村に求めていく大半の小中学校は、災害時の避難所に指定されていることから、高齢者にもやさしい施設にするためにもバリアフリーが急がれる。
虐待については、「障害者虐待防止法」では虐待行為者の範囲を、養護者と障害者福祉施設の従事者及び障害者を雇用する事業主としており、特別支援校や特別支援学級で体罰が表面化している中、虐待の温床になっている病院や学校を加えるよう政府に働きかけるとともに、都道府県では「障害者権利擁護センター」を、市町村では「障害者虐待防止センター」の設置が定められているので、都道府県と市町村に通報状況や対応上の問題などを確認する活動を行う。
児童の虐待については、平成12年5月に成立した「児童虐待の防止等に関する法律」や「児童福祉法」の度重なる改正から、虐待の定義や通報義務の拡大、警察に対する援助要請、出頭要求の制度化、裁判所の許可を得ての立入調査と臨検・捜索、立入の拒否での罰金の引き上げ、地方公共団体での要保護児童対策知的協議会の設置等、児童相談所や福祉事務所の権限を強化してきているが、平成29年の4月からは裁判所の許可を得る立ち入り調査や臨検・捜索が迅速・的確な対応ができるよう要件が簡素化されたにも拘らず、悲惨な事件が続いたことから、「児童福祉法」と「児童虐待防止法」の改正案が令和元年6月19日に成立した。
この改正では、児童虐待防止対策の強化を図るため、児童の権利擁護、児童相談所の体制強化と関係機関間の連携強化等が図られ、しつけとして体罰を容認する風潮がある親権者等による体罰の禁止が明記された。
令和2年の2月にまとめられた指針「体罰等によらない子育てのために」〜みんなで育児を支える社会に〜では、
 ・言葉で3回注意したけど言うことを聞かないので、ほほを叩いた
 ・大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
 ・友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
   ・他人のものを取ったので、お尻を叩いた
 ・宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった
 ・掃除をしないので、雑巾を顔に押しつけた
以上の6項目の例も体罰に挙げ、虐待の定義として、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待としている。
これら体罰や虐待を発見した場合には、通告義務があることから、速やかに都道府県の設置する福祉事務所か児童相談所に通告し、体罰や虐待の防止に努めるとともに、私どもも体罰等によらない子育てに努める。
なお、令和3年度に児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は207,660人(2,616件増、対前年比1.3%増)で過去最高になっている。民法第822条の親権者の「看護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる」との条文は、体罰の根拠になっていることで、この条文を削除する民法の改正が第208回国会へ提出され、令和4年12月10日に成立し、第821条(子の人格の尊重等)「親権を行う者は、前条の規定による監護及び教育をするに当たっては、この人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない」を加えた。なお、令和4年の1年間に全国の警察が検挙した虐待事件は2,181件(前年比0.3%増、その内無理心中を含め死亡した子どもは前年より17人減の37人)で、被害を受けた子どもは2,214人(前年比0.2%減)になり、前年より警察から児童相談所に虐待を受けた疑いがあるとして通告された18歳未満の子供は115,762人(7,703人増、前年比7.1%増)と過去最多を記録している。
虐待で悲惨なケースが続いていることで、児童相談所の専門職である児童福祉士を、現在5,780人程度から令和5・6年度に1,060人程度を増やし、6,850人程度にするとしている。
令和4年6月8日に改正「児童福祉法」が成立したことで、新たな児童虐待の専門職として「子ども家庭福祉ソーシャルワーカー」(仮称)が認定資格(国家資格)として令和6年度に導入されるとともに、虐待を受けた子どもを親から引き離す一時保護を行う際の手続きに、司法審査(裁判所が一時保護状を発行し7日以内に司法が介入するもの)も導入された。
なお、今後は、本年4月1日に新たに設置される「子ども家庭庁」が所管することになり、市町村には「子ども家庭センター」が設置さるので、市町村や児童相談所と連携して、悲惨な児童虐待での犠牲者をなくしていく。
学校での「いじめ」については、平成25年6月に「いじめ防止対策推進法」が制定され、いじめの定義の拡大やいじめ問題への対応が明確化されてきたが、未だに「いじめ」による悲惨な自殺が続いていることから、「いじめの防止等のための基本的な方針」を改訂するとともに、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」が策定された。
基本方針の改定では、発達障害を含む障害のある児童生徒、性同一性障害や性的指向・性自認(LGBT)に係る児童生徒、東日本大震災により被災した児童生徒等については特に配慮が必要と明記され、インターネット上のいじめが重大な人権侵害に当たり、被害者等に深刻な傷を与えかねない行為であることを理解させる取り組みを行うことも明記された。
また、いじめの解消は、被害者に対する心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)が止んでいる状態が3か月以上継続しているとした。
新たに策定された「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」では、「基本方針」(平成25年10月)、「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」(平成26年7月)、「不登校重大事態に係る調査の指針」(平成28年3月)が策定された後も、学校の設置者又は学校において、いじめの重大事態が発生しているにもかかわらず、「法」、「基本方針」及び「調査の指針」に基づく対応を行わないなどの不適切な対応があり、児童生徒に深刻な被害を与えたり、保護者等に対して大きな不信を与えたりした事案が発生していることを踏まえ、「ガイドライン」を策定したとしているので、今後はいじめによる悲惨な出来事が起こらないように、各学校に設置されている「いじめの防止等の対策のための組織」の点検を行っていく。
スクールカウンセラーについては、全公立小中学校27,500校への配置、いじめ・不登校対策のための重点配置(2,000校→2,900校)、貧困対策のための重点配置(1,900校→ 2,300校)、虐待対策のための重点配置(1,500校→2,000校)、教育支援センターの機能強化(250箇所)、スーパーバイザーの配置(90人)、自殺予防教育の支援、スクールソーシャルワーカーについては、すべての中学校区への配置(10,000中学校区)、いじめ・不登校対策のための重点配置(2,000校→3,000校)、貧困対策のための重点配置(2,900校→3,500校、ヤングケアラー支援のための配置を含む)、虐待対策のための重点配置(2,000校→2,500校)、教育支援センターの機能強化(250箇所)、スーパーバイザーの配置(90人)、24時間通話料無料の子供SOSダイヤル(補助率1/3)、SNSを活用した相談体制の整備に対する支援(補助率1/3)、不登校児童生徒に対する支援推進事業(補助率1/3)、幅広い外部専門家を活用していじめ問題等を調整・支援する取組の推進(補助率1/3)、新規事業としてオンラインカウンセリング活用のための配置67箇所、スクールロイヤーは、一部の地方公共団体で取り入れられ、文部科学省も全国に300名を配置するとしていたが、予算措置が見送られ、令和2年度からは普通交付税措置が講じられているので、積極的な活用を地方公共団体に求めるとともに、配置を文部科学省に求めていく。 令和3年度のいじめの認知件数(小・中・高・特別支援校)については615,351件で過去最多で、前年度の517,163件から98,188件(19.0%)増加していて、ネット(パソコンや携帯電話を使用しての誹謗・中傷)でのいじめの認知件数も、前年度の18,870件から3,030件の増で21,900件の過去最高になった。
なお、自殺等重大事態については、前年度の514件から191件(37%)増の705件になっている。
文部科学省は、平成25年からは警察との連携をするよう通知をだしているが、令和3年度のいじめの件数615,351件に対して、僅か、1,344件の0.2%でしかなく、本年の2月7日に再度、警察との連携を徹底するように通知を出しているので、学校現場に警察との連携を密にし、いじめをなくすよう要請していく。
また、いじめ防止のため道徳が重視され、道徳が正式な教科になり、小・中学校は全面実施になっていることから、差別を「しない、させない、見逃さない」ことは最高の道徳だと思われるので、道徳も最大限に活用するよう求めていく。
なお、インターネットの活用についても、情報モラル教育の充実をも求めていく。

性同一性障害や性的指向・性自認(LGB-T)に係る児童生徒については、既に、平成27年4月に「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」として、学校における支援の実例を上げたものをまとめているが、現場の教職員からより指導し易いものをとの要望を受け、平成28年4月に教員向けとして「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」をまとめ、各学校に配布されているので、その実施状況や問題点等を確認する。
子ども政策の司令塔になる「子ども家庭庁」が内閣府の外局として本年4月1日に430人体制で創設されるが、当初、予定されていた文部科学省の幼稚園やいじめ対策は移管されず、内閣府は少子化対策、子どもの貧困対策、児童手当、認定こども園を、厚生労働省は虐待対策、ひとり親家庭支援、母子保健、保育所を移管する。

この「子ども家庭庁」の創設に併せて、「子ども基本法案」が議員立法として令和4年6月15日に成立したが、子どもの権利が守られているかのチェックや虐待や貧困などを調査・勧告の権限を持つ行政から独立した第三者機関「子どもコミッショナー」の設置については自由民主党内の意見がまとまらず見送られたが、5年後の見直し条項があるので、「子どもコミッショナー」の機能が取り入れられるよう、理解を求めていく。 また、「子ども家庭庁」の創設に併せて、子育て世帯を包括的に支援する「こども家庭センター」を全国の市町村に設置される予定。
これは現在二つに分かれている@母子保健法に基づき設置されている、妊産婦や乳幼児の保護者の相談を受ける「子育て世代包括支援センター」と、A児童福祉法に基づき設置されている、虐待や貧困などの問題を抱えた家庭に対応する「子ども家庭総合支援拠点」を一本化して「こども家庭センター」に改めるもので、令和6年度以降の設置を目指すとしている。
このセンターでは、家族の介護や世話を日常的に担っている「ヤングケアラー」や虐待、貧困、若年妊婦など、問題を抱える家庭に対する支援提供計画「サポートプラン」を作成して、家庭を訪問し、家事や育児の援助を行うことを想定しているらしいので、全面的に協力する。 女性の人権については、平成13年10月から施行された「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV法)によって、平成14年4月からは「配偶者暴力相談支援センター」が各都道府県に設置され、業務を開始しており、平成19年7月の改正により、市町村にも配偶者暴力相談支援センターの設置が努力義務となったが、ほとんどの市町村は設置していないことから、その設置を市町村に求めていく。(令和4年9月1日現在、全国308施設で、その内市町村が設置する施設は135施設、前年より6施設の増加) なお、この支援センターへの相談件数は年々増加しており、令和3年度は122,478件で、令和4年に警察が対応したものでも84,496件で前年度より1,454件(前年比1.8%増)増えており、加害者への指導や警告も前年より1,298件増の60,539件になっているが、検挙件数は前年より減少し、99件減の8,535件になっている。また、これまで身体に対する暴力を受けたものに限り、保護命令を申し立てることができたのに対して、平成20年1月からは生命・身体に対する脅迫を受けた者についても、身体に対する暴力によりその生命・身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合には、保護命令を発することができることとなったほか、被害者への接近禁止命令の実効性を確保するため、接近禁止命令の発令されている間について、被害者の親族等への接近禁止命令も発することとされ、さらに、被害者への面会の要求や無言・夜間の電話等を禁止する電話等禁止命令も新設されたことで、平成26年の2,576件をピークに令和4年では前年より252件減少し、1,082件について保護命令が発令された。
よって、少しでも危害を受ける可能性がある場合は、積極的に保護命令を活用して被害を防いでいく。
「DV防止法」の改正案が今国会へ提出されているので、成立すれば令和6年度からは、身体だけではなく精神への重大な影響を及ぼす「精神的DV」も保護命令の対象に加えるとともに、接近禁止命令などの保護命令期間を6カ月から1年に、罰金も現行の「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」から「2年以下の懲役または200万円以下の罰金になる。
また、「ストーカー規制法」による相談件数は、平成29年の2万3,079件をピークとして、令和4年では19,131件で、前年より597件(0.3%)減少しているが、つきまといなどを禁止する禁止命令は前年より73件(4.4%)増の1,744件になり、検挙についても91件(9.7%)増の1,028件が検挙され、いずれも過去最多になっている。
この「ストーカー規制法」は平成25年6月に改正され、電子メールを対象に加えることや禁止命令等を出すことができる公安委員会の処置が拡大され、国及び地方公共団体は民間の自主的な組織活動の支援のための体制整備に努めることも明記されたが、相談窓口すら設置していない市町村が多数存在することから、その体制整備を都道府県・市区町村に求めていく。
昨年の5月には、GPS機器や居場所が分かるスマートフォンアプリの悪用を禁じた改正が行われた。これで「ストーカー規制法」は3回目の改正になる。
今後もDVやストーカー被害者の増加が予想されるが、緊急な避難場所としてのシェルター(一時避難所)が不足しているので早急に設置するよう市町村に求めていく。
また、民間シェルターは、全国で124運営団体(令和2年11月1日現在)があるが、いずれも財政基盤が脆弱で運営が厳しいのが実情であるので、地方公共団体へより一層の財政支援を求めていく。
現在のDVやストーカーでの一時保護施設(婦人保護施設)は、売春防止法の売春を行うおそれのある女子を収容保護施設に基づいて運営されているが実態に合わないことから、DVや性被害、生活困窮などで苦しむ女性の支援を拡大する「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律案」が超党派の議員立法として作成され、令和4年5月19日に成立したことで、令和6年4月から、現在の「婦人保護施設」から「女性自立支援施設」に改称される。
平成27年の8月に成立し、平成28年4月に施行された「女性活躍推進法」は、女性の地位の向上のため従業員301人以上の企業、国や自治体に女性管理職の割合や採用比率などを数値目標にすることなど、取り組む内容を平成28年の4月1日までに、企業は行動計画を国や地方公共団体は推進計画を策定して公表することを義務付けるものであったが、令和元年5月29日に改正案が成立したことで、これまでの従業員301人以上の企業が義務であった行動計画の策定が、令和4年4月からは101人以上も義務になったので、対象企業に行動計画の策定を求めていく。
「男女雇用機会均等法」により、セクシャルハラスメント(性的言動)は防止の措置を講じることになっているが、平成28年3月に「均等法」が改正され、マタニティーハラスメント(出産・妊娠)も平成29年1月からは防止の措置を講じなければならなくなったが、令和元年5月29日には「女性活躍推進法」と「労働施策総合推進法」の改正案が成立したことで、大企業(300人以上の企業)は、令和2年6月1日からパワハラ(上司などの優越的な関係を背景に、業務上必要な範囲を超えた言動で働く環境を害すること)防止の措置を講じることや相談窓口の設置が義務になったが、本年の4月からは中小企業もパワハラ禁止を就業規則に明記するなど、パワハラ防止策と相談窓口の設置が義務になったので、会員企業に指導していく。
なお、「女性活躍推進法」では女性活躍に関する取組が特に優良な事業主に対する特例認定制度(プラチナえるぼし)が創設されているので、認定されるよう促していく。また、政治の分野でも、「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が平成30年の5月に成立しているので、女性の候補を増やすために女性だけの政治塾などを開催するよう政党に求めていく。
私どもも、女性の社会参加を促し、働きやすい環境づくりに努めていく。




住環境整備については、近隣地域との差異がないかを点検しつつも、高齢者・障害者・妊娠している女性・子どもなど、ハンディキャップがある人たちが自由に社会に参加できる活力ある地域にするため、バリアフリーは当然のこととして、ユニバーサルデザインの用具をも活用する「人権のまちづくり」を視野に入れた取り組みを展開し、ノーマライゼーションを達成する。
バリアフリーの基準としては、介助がない車イスでどこへでも自由に、安心・安全・快適に移動できるものとする。
バリアフリーについては、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律」(通称、ハートビル法)と「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(通称、交通バリアフリー法)を統合した新法「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(通称、バリアフリー新法)が、施行されているので、この「バリアフリー新法」と平成28年の4月から施行される「障害者差別解消法」を積極的に活用してバリアフリーの建築物を増やしていく。
老朽化した改良住宅・公営住宅の建替えを行う際については、空き家の集約化を図り、集約化で空いた土地を民間に払い下げるなど、空き地の有効活用で混住化を促進する。
また、定期借地権などを活用して持ち家化を考慮しつつも、払い下げを積極的に求めて、これを機会に「人権のまちづくり」を具現化する総合計画の策定を市町村に求めていく。改良住宅・公営住宅の空き家がある場合には、混住化を促進するためにも、一般公募制度を活用し、また、若年層の流入を促すために、就学前の子どもを持つ世帯とか新婚家庭や妊婦については優先入居(国土交通省も子育て世帯の優先入居を拡大する方針)や割引の導入などの工夫を凝らして空き家をなくしていくとともに、高齢者の孤立死を防止する手立てを講じるよう、市町村に要求していく。
なお、公営・改良住宅の入居者の選定や管理を、未だに地区の自治会や同和運動団体の役員に任せていることは、不正行為や混住化を妨げる温床になることから、公営・改良住宅の管理・運営を市町村が行うよう、市町村に強く要請していく。
批判の対象になっている改良住宅・公営住宅の家賃については、応能応益制度を取り入れ、暫時、見直しを進めていくことになっているが、応能応益制度を取り入れていない市町村には、早急に制度を取り入れ、家賃の見直しをするよう要求していくとともに、家賃の滞納を市町村と協議しながら早急に改善していく。
地域の拠点である隣保館については、「部落差別解消法」が成立したことで運営費の削減や廃止は当分の間回避できるものと思われるが、これを機会にあらゆる差別や虐待などの人権侵害や生活困窮者等が相談でき、また、広く市民も利用できる公的施設にすることで交流が生まれ、また、同和対策で住環境が改善された同和地区を眺めることで、旧同和地区の心象を変えていくことにもなるので、障害のある人もない人も利用し易い施設にするために、厚労省の改修費補助を積極的に活用してバリアフリー化をも進めていく。
また、指定管理者制度を活用して、管理者になりうる学習を行い、活性化を図ることも考慮する。




旧同和関係事業者は零細で、かつ、建築・土木関係業者が極めて多いという特定の業種に偏った特有性をもっているので、公共事業が年々減少していくような状況で基盤を確立することは非常に困難ではあるが、合理化や近代化を促進するとともに、生き残りのため共同化や協業化を進めていく。
業種転換する場合には、政府が中小・零細業者向けセーフティーネットとして実施している各種融資制度の有効活用や各省庁のホームページで最新の情報等を有効利用するとともに、都道府県や市町村と協議しながら、きめ細かな指導をしていく。
未就労者に関しては、ハローワークを最大限活用するとともに、規制の緩和により都道府県も就労の斡旋ができるようになったことと、現在、様々な雇用対策が実施されているので都道府県と連携を図り、未就労をなくしていく。
平成27年4月から「生活困窮者自立支援制度」が始まっているので、この制度を積極的に活用していく。 また、専門性を取得するために職業訓練や研修・講座などを有効活用し、就労を確保していく。特に、世界でも類のない高齢化社会に進んでいることで、介護福祉士やホームヘルパーが不足しているため、求人の需要が非常に高くなっていることから資格の取得を奨励していく。
農林漁業者については、付加価値の高いものに移行するとともに、ブランド化を目指し、インターネットを活用して消費者との直販や販売店との直取引など販路の拡大を図っていく。このことは、畜産、園芸でも同様であり、漁業については、養殖なども検討していく。
なお、本格的に導入された「指定管理者制度」では、すべての公共施設を指定管理者に管理をさせることになっているので、隣保館なども対象になることから、各都府県本部で設置しているNPO法人の実情に合った公共施設の指定管理者になり、雇用の促進ができるよう、都道府県・市町村と協議していく。
いずれにしても、最新の情報を得るため中央本部は各省庁と、都府県本部は都府県と緊密な連携を図り、会員に最新の情報の伝達や相談を行うため、都府県本部内に相談業務を確立していく。
また、就職差別をなくし、安定した雇用を確保するため、厚生労働省が100名以上の従業者を有する企業に設置を求めている「公正採用選考人権啓発推進員」との連携を深めていくと同時に、障害者の雇用をも促進するため、法定雇用率(常用労働者が43.5人以上の民間企業は2.3%)を下回る企業については、特に積極的に雇用するよう求めていくが、抜本的に就職差別をなくすため、ILO第111号条約の「雇用及び職業における差別に関する条約」を批准し、国内法を整備するよう厚生労働省に求めていく。




教育・啓発については、既に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が制定されており、国においては基本計画も策定実施されているが、「部落差別解消法」の成立から、この2つの法律を有効活用し、すべての都道府県、すべての市町村に、この基本計画の策定と実施を強く求めていくと同時に、現状に即した内容になっていない場合には見直しを強く求めていく。
また、基本計画には企業の役割も明記されていることから、厚生労働省が100名以上の従業員を有する企業に設置を求めている「公正採用選考人権啓発推進員」との連携を深め、企業内の人権研修の充実に努めていくとともに、未設置の企業には、推進員の設置を求めていく。
高等学校の授業料の無償化は、平成26年度からは所得制限(年収約910万円)が取り入れられ、国公私立を問わず、高校等の授業料の支援として、年額118,800円(月額9,900円)が就学支援金として支給される制度に変更され、私立高校の場合には、令和2年4月からは世帯の年収590万未満は年額39万6,000円が支給され実質無償化になる。大学・短期大学・専門学校の奨学金は、令和2年4月から新制度になり、授業料の免除・減額と給付が本格的に始まったが、住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯(世帯年収約380万円未満)になっているので、対象者を増やすため世帯年収の引き上げを要請する。(令和6年度からは、扶養する子どもが3人以上いる「多子世帯」や理工農系の学生も対象になる予定だが年収は未定)



日本学生支援機構の貸与型の奨学金はこれまでと同様に、学力基準(住民税非課税世帯は学力基準実質的に撤廃)がある第1種(無利息)と、学力基準がない第2種(利息付)とがあり、第2種の場合は毎月貸与する金額が、2万円〜12万円(1万円刻み)と選択できるようになっているが、令和5年度予算要求では、授業料等減免・給付型奨学金5,311億円、無利子2,957億円(503,000人)、有利子5,949億円(693,000人)になっている。 なお、給付型奨学金は第1種の奨学金との併用は可能になっている。 また、1種・2種の奨学金と合わせて、入学の時に必要な資金として、入学時特別増額も、10万円・20万円・30万円・40万円・50万円と、借りることができる。 日本学生支援機構の奨学金とは別に、国の教育ローン(日本政策金融公庫)は、利息は高いが350万円まで借りることができる。 また、市区町村の社会福祉協議会でも、低所得世帯を対象に生活福祉資金貸付制度として教育支援資金があり、就学支度費が50万円以内、教育支援費が大学で月額6万5千円以内、短期大学等で月額6万円以内を無利息で借りることができる。
これら奨学資金制度を活用し、大学・短期大学の進学率の向上を図っていくと同時に、所得の格差で教育の格差が生じないよう、大阪市が実施している塾代補助である「教育バウチャー制度」を文部科学省に求めていく。
なお、低所得で奨学金の返済ができず滞納者が増加していることから、「所得連動返還型制度」や「返還免除規定」の導入を求めていたが、平成24年度からは「所得連動返還型無利子奨学金」(第1種)が導入され、平成29年度からは「新たな所得連動返還型奨学金」(猶予年限特例)が導入されたが、これは第1種(無利子)の奨学金のみが対象で第2種(有利子)の奨学金は対象外なので、第2種(有利子)の奨学金も導入するよう要請していく。
新たな返済方法として、「年収300万円以上」に達した段階で返済が始まる「出世払い」方式が検討されているので実現を求めて要請していく。
平成20年3月に「人権教育の指導方法の在り方について」(第3次とりまとめ) が、平成21年10月には「人権教育の推進に関する取組状況の調査結果について」が文部科学省でまとめられ、各学校に配布されていることから、その実施を求めていくが、その際には、カリキュラムには最大限の関心を持ち、人権教育が計画的に実施されるよう働きかける。
また、導入することに賛否が分かれている学校選択制度については、旧同和関係者が多数在籍する学校を敬遠するなど、解決しつつある同和問題を逆行させる可能性と、これまでの学校と地域の一体性が瓦解し、児童生徒が減少する地域は崩壊する可能性もあることから、導入には断固として反対していく。
なお、近年各地で始められた小・中一貫教育については、「学校教育法」が改正され平成28年4月から施行された。その学校の名称は「義務教育学校」になることから、旧同和関係者が多数在籍する学校を、「義務教育学校」にし、交流を深めて同和問題の解決に繋げていく。 未だに、児童・生徒の人権を侵害する教師の体罰や差別言動が少なからず発生していることから、教職員に対する人権研修の徹底をも求めていく。




国家行政組織法の第3条委員会としての「人権委員会」が創設されるまでは、平成15年の3月に20年ぶりに改正された「人権侵犯事件調査処理規程」での対応になるが、差別での泣き寝入りは絶対にさせないとの強い気持ちで、「人権侵犯事件調査処理規程」を有効に活用して救済を図っていく。
多発する学校でのいじめ問題を始めとする様々な人権問題に対処するため、平成25年度からは全国の法務局に、企画担当委員として人権擁護委員が常勤する人権擁護体制の強化が図られているので、積極的に人権救済を行っていく。
また、「人権擁護法案」と「人権委員会設置法案」のいずれもが、言論や表現の自由を規制するものだとの批判が巻き起こり、結果的に成立に漕ぎ着けないでいるので、国民の支持が得られるようにするため、法案に記述する人権侵害の定義を誰もが分かり易いものに見直す作業を開始する。インターネットの人権侵害については、匿名の場合が多いことから発信者を特定するためには2度の裁判が必要であったが、令和3年4月に「プロバイダ責任制限法」が改正され、令和4年10月から新たな裁判手続きが創設され、1度の裁判で発信者の特定ができるようになったため活用を検討する。
また、インターネットの人権侵害については、総務省に設置されている有識者会議が、問題のある投稿の迅速な削除に向けた手続きを創設する検討に入り、裁判をしないでトラブルを速やかに解決する「裁判外紛争解決手続き」(ADR)の活用を視野に入れた議論を行い、夏ごろをめどに報告書が出される予定だが、日本新聞協会から「法規制の導入は表現の自由を脅かし、正当な言論活動を委縮させかねず、引き続き慎重な検討が必要とする意見が表明されているので、注視しながら見守りたい。
インターネットの誹謗・中傷対策の強化として、現行の侮辱罪の法定刑は「拘留(30日未満)または科料(1万円未満)」だが、「1年以下の懲役・禁固または30万円以下の罰金」にする厳罰化と公訴時効も1年から3年に延ばすことで、名誉棄損罪の「3年以内の懲役もしくは禁固または50万円以下の罰金」に近づけた刑法の改正案が、令和4年6月13日に成立したので活用していく。




最近は、人権問題の解決に最も大事なコミュニケーションを阻害し、アメリカ社会のような分断や対立を生む、過度なポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ、略して「ポリコレ」)やマイクロアグレッション(あからさまではなく無自覚な差別)を運動の中核に取り入れていく動きがあるが、行き過ぎた「ポリコレ」やマイクロアグレッションは、寛容で多様な考えや価値観を否定する窮屈な社会となり、人権問題への理解よりも関与を避ける逆の効果でしかない。
国の内外で企業活動での人権の尊重の高まりを受け、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けた取組の一つと位置付けた国内行動計画(令和2年〜令和7年)「ビジネスと人権」が策定されているので、会員企業や取引先(サプライチェーン)も含めた企業に徹底した人権の尊重を指導していく。

特に「人権デュー・ディリジェンス」(人権侵害に関わるリスクを評価し、コントロールすること)の観点からも理解が必要な、LGB-T(性的マイノリティ)の問題については、万人に公平・平等で接しなければならない公務員が、オフレコで自分の嫌悪感を述べたことで、大きな問題に発展し、職を追われたが、好き嫌いまで言えない社会は暗黒である。
先ごろ、SDGsの観点から食糧危機に備えるとして昆虫食、中でも食用コオロギが話題になったが、気持ち悪く生理的に受け付けず食することができないとする声に、コオロギを差別するなとの声が出始めた。
嫌なものは嫌で、何でもかんでも差別と言えば相手が屈服すると思っている愚か者が多いのも困ったものだが、このような風潮を作ってしまったのは、私どもの運動にその要因の一端があることは率直に認めなければならない。大いに反省すべきである。
「LGBT関連法」が成立すれば、身体は男で心は女のトランス女性が女湯に入ってくるとネットを騒がしているが、確かに、おちんちんブラブラで女湯や更衣室への入場、或いは、女子トイレなどの女性スペースの使用について、女性が恐怖感を抱くのは自然なことで、女児や女性の安心で安全な暮らしを守らなければならないことは当然であり、女性の人権を蔑ろにするようなことは止めなければならない。このような手術をせずに戸籍上の性別と違う性別での性自認(自称)は断じて受け入れられず、温泉文化日本を尊重すべきである。
私どもがLGB-Tと表記しているように、LGBとTに分けて問題を整理すれば理解し易くなる。LGB(レズ、ゲイ、バイセクシャル)の問題としては、同性での結婚であるし、T(トランスジェンダー)の問題としては、手術を行わずに戸籍上の性別を変更することであろう。
LGBの人達がTを加えることで問題を複雑にし、あえて分かりづらくさせて社会を混乱させることで、市民権を得ようとしている意図が透けて見えるが、現状ではまさしくその思惑通りに世界は動いている。
同性での婚姻については、自衛隊については9条の解釈憲法だと批判しているにもかかわらず、婚姻に関しては憲法24条には「両性の合意」と記載してあるものを、同性の婚姻を拒否、妨げるものではないと解釈憲法に持ち込もようとしている。
まさにご都合主義、ダブルスタンダードの典型であり、裏口ではなく正面から堂々と憲法改正に臨むべきで、安易に姑息な手段での解釈憲法でお茶を濁すべきではない。
いずれにしても、混乱に歯止めをかけるためにも、LGBT理解増進会が提唱するカミングアウトをしなくても当事者が何の障壁もなく社会生活が営める社会の実現を図るべく、自由民主党が作成した「LGBT理解増進法案」の一日も早い成立を期して、ガイドラインを早急に作成する事を強く求めていく。
日本は昔から同性愛者には寛容な民族であるが、世界では、同性愛者を犯罪とみなす法律がある国が存在する。虹色ダイバーシティの調査によれば、令和4年7月現在で、死刑が12ヵ国、禁固刑10年〜終身が27ヵ国、禁固刑10年未満または刑罰不確定が31ヵ国、法による制限が18か国の合計88ヵ国になる。人権上の関係で犯罪とする国が少なくなったと言っても88ヵ国も存在するのは、宗教上のことが要因であろうが、安心で住み易い社会をつくるため、「LGBT理解増進法案」の早期成立に全面的に協力するとともに、積極的に教育・啓発を進めて行く。 併せて、人権侵害の被害者を簡易・迅速・柔軟に救済を図る目的の「人権委員会」の設置を中心にする新たな内容の「人権擁護法案」が成立できるよう自由同和会の総力を挙げて取り組むものとする。
 





 
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