この「同和対策特別措置法」は3年間の延長を経て、昭和57年には「地域改善対策特別措置法」、昭和62年には「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」に名称を変え、5回の延長で33年間続けられた。
「同対審答申」から50年、「同和対策特別措置法」制定から46年の歳月が流れる中、同和地区の環境は大きく変貌し、国民の人権意識の高揚から、同和関係者に対する差別意識も大きく改善されてきているが、未だに、結婚や移住に忌避意識が存在し、完全解決には至っていない。
平成8年(1996年)の「地対協」意見具申では、「部落差別が現存するかぎりこの行政は積極的に推進されなければならない」とし、更に「特別対策の終了、すなわち一般対策への移行が、同和問題の早期解決を目指す取組の放棄を意味するものでないことは言うまでもない。一般対策移行後は、従来にも増して、行政が基本的人権の尊重という目標をしっかりと見据え、一部に立ち遅れのあることも視野に入れながら、地域の状況や事業の必要性の的確な把握に努め、真摯に施策を実施していく主体的な姿勢が求められる」としている。
このことを踏まえ、「同対審答申」から二分の一世紀、「同対法」施行から二分の一世紀を目前に控えた今日、何が解決し、何が未解決なのかの整理を行い、未解決な問題を解決するためにはどのような施策が必要なのかを検討していく。
「障害者差別解消法」が平成28年4月から施行されることで、同法第6条に規定する「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」を本年2月に策定公表した。
更に本年9月までに、「国等職員対応要領」と「事業者のための対応指針」が作成されることになっている。
よって、これらに即して各省庁は各種施策を策定することになるので注視していく。
地方公共団体についても、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策の策定と実施を求めていることから、国に準じた「基本方針」「職員対応要領」「事業者のための対応指針」の策定を求めていくと同時に、障害を理由とする差別に関する相談や紛争の防止及び解決を図ることと、差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うために「障害者差別解消支援地域協議会」の設置を求めていることから、この「協議会」が早期に設置されるよう市町村に求めていく。
障がい者の雇用については、平成25年4月からは法定雇用率が、民間企業は1.8%から2.0%に、国及び地方公共団体は2.1%から2.3%に、都道府県等の教育委員会は2.0%から2.2%に引き上げられたことで、民間企業では43万1,225.5人の対前年5.4%(22,278.0人)の増になっているが、法定雇用率の達成企業の割合は、44.7%で対前年比で2.0ポイント上昇しているが、未だに過半数に達していないことから企業に雇用の促進を強力に求めていく。
また、厚生労働省は「障害者の雇用の促進に関する法律」に基づき、「障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」と「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」を本年3月に決定した。
この指針では、募集採用時や採用後での差別禁止や合理的配慮を定めているので、この指針が守られているかの点検も併せて行っていく。
なお、現在は精神障がい者の雇用は義務化されていないが、平成30年4月からは義務化されるので、更なる法定雇用率の引き上げが予想される。
ノーマライゼーション(共生社会)の観点からのインクルーシブ教育(特定の個人・集団を排除せず学習活動への参加を平等に保障する)システム構築事業については、心のバリアフリーの推進として交流及び共同学習(25箇所)が新規事業で加えられたが、早期からの教育相談・支援体制の構築(40→40箇所・早期支援コーディーネーター役120→120人の配置)、インクルーシブ教育システム構築モデル事業(65→35地域・合理的配慮協力員役130→70人の配置)、特別支援学校機能強化モデル事業(36→25箇所)、医療的ケアのための看護師の配置(約330→330人)になっていて、今年度は昨年度に比べ縮小予算になっていることから予算の拡充を文部科学省に求めていく。
虐待については、「障害者虐待防止法」では虐待行為者の範囲を、養護者と障がい者福祉施設の従事者及び障がい者を雇用する事業主としており、特別支援校や特別支援学級で体罰が表面化している中、虐待の温床になっている病院や学校を加えるよう政府に働きかけるとともに、都道府県では「障害者権利擁護センター」を、市町村では「障害者虐待防止センター」の設置が定められているので、都道府県と市町村に通報状況や対応上の問題などを確認する活動を行う。
学校での「いじめ」については、「いじめ防止対策推進法」が制定されたが、未だに「いじめ」による悲惨な自殺が続いていることから、各学校に設置されている「いじめの防止等の対策のための組織」の点検と、スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの拡充とともに、コミュニティ・スクールの拡大を文部科学省に求めていく。
また、地域住民が学校の運営等に積極的に参加する学校地域協議会とも連携し、活用していく。
一方、女性の人権については、平成13年10月から施行された「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV法)によって、平成14年4月からは「配偶者暴力相談支援センター」が各都道府県に設置され、業務を開始しており、平成19年7月の改正により、市町村にも配偶者暴力相談支援センターの設置が努力義務となったが、ほとんどの市町村は設置していないことから、その設置を市町村に求めていく。(平成26年3月現在、全国238施設で、その内市町村が設置する施設は65施設、目標は100施設)
なお、この支援センターへの相談件数は年々増加しており、平成24年度は8万9,490件で、平成25年に警察が対応したものでも4万9,533件(平成26年は59,072件で、摘発は6,992件)になっている。
また、これまで身体に対する暴力を受けたものに限り、保護命令を申し立てることができたのに対して、平成20年1月からは生命・身体に対する脅迫を受けた者についても、身体に対する暴力によりその生命・身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合には、保護命令を発することができることとなったほか、被害者への接近禁止命令の実効性を確保するため、接近禁止命令の発令されている間について、被害者の親族等への接近禁止命令も発することとされ、さらに、被害者への面会の要求や無言・夜間の電話等を禁止する電話等禁止命令も新設されたことで、平成25年では2,991件の申し立てがされ、2,312件について保護命令が発令された。
よって、少しでも危害を受ける可能性がある場合は、積極的に保護命令を活用して被害を防いでいく。
なお、「ストーカー規制法」による認知件数も平成26年では22,823件で、2,473件が摘発され、その内2,242件で逮捕されている。
この「ストーカー規制法」は平成25年6月に改正され、電子メールを対象に加えることや禁止命令等を出すことができる公安委員会の処置が拡大がされ、国及び地方公共は民間の自主的な組織活動の支援のための体制整備に努めることも明記されたが、相談窓口すら設置していない市町村が多数存在することから、その体制整備を都道府県・市区町村に求めていく。
今後もDVやストーカー被害者の増加が予想されるが、緊急な避難場所としてのシェルター(一時避難所)が不足しているので早急に設置するよう市町村に求めていく。
|