各年度運動方針
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 平成19年度 運動方針

はじめに
 

 昨年の通常国会では「人権擁護法案」を国会へ提出するため、関係要路に強く働き掛けをおこなったが、自民党内の手続きを始めることができず見送り、安倍政権に委ねることになった。
  しかし、「人権擁護法案」の反対派の筆頭である安倍総理は、自民党の「人権問題等調査会」の会長を選任せず、法案修正の審議をも封印する姑息な手段を講じてきたことで、自民党内の審議は止まっているが、本年7月に実施される参議院議員選挙後には、内閣の改造と自民党役員の入れ替えが行われるであろうことから、その機会を最大限に活用して自民党内での法案修正の審議を進め、成立を図っていく。
  「人権擁護法案」は、同和問題の完全解決には必要不可欠であることから、僅かでも成立の可能性があれば、諦めずに成立を求めていく。
その他として、男女共同参画社会基本法により、都道府県には国と同様に男女共同参画社会を促進するための基本計画の策定が義務付けられているため、すべての都道府県で策定されている。しかし、市町村については努力義務になっているため、策定している市町村がまだまだ少ないのが現状であることから、策定していない市町村に策定を求めていく。特に、四国と九州での策定が少ないので強く策定を求めていく。
また、障害者基本法が平成16年6月に改正され、障害者計画が都道府県は努力義務から義務に、本年の4月からは市町村も障害者計画が義務付けられるので、策定していない市町村については、国の市町村障害者計画策定アドバイザー派遣事業を活用しながら、数値目標を揚げた基本計画の策定を求めていく。


1. 住環境整備
 
  住環境整備については、近隣地域との差異がないかを点検しつつも、高齢者や障害者が自由に社会に参加できる活力ある地域にするため、バリアフリーを中心にする「人権のまちづくり」を視野に入れた取組みをも展開し、ノーマライゼーションを達成する。

  地域の拠点になる隣保館については、バリアフリー化への改修費補助があるので積極的に活用していく。

  バリアフリーの基準としては、介助がない車イスでどこへでも自由に、安心・安全・快適に移動できるものとする。

  バリアフリーについては、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律」(通称、ハートビル法)と「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(通称、交通バリアフリー法)を総合した新法「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(通称、バリアフリー新法)が昨年の通常国会で成立し、昨年の12月から施工されているので、この「バリアフリー新法」を積極的に活用してバリアフリーの建築物を増やしていく。
  老朽化した改良住宅・公営住宅の建替えを行う際については、定期借地権なども考慮しつつ、払い下げも視野に入れ検討し、これを機会に「人権のまちづくり」を具現化する総合計画の策定を市町村に求めていく。
  改良住宅・公営住宅のアキやがある場合には、混住化を促進するためにも、一般公募精度を活用し、空き家をなくしていくよう市町村に要求していく。
  批判の対象になっている改良住宅・公営住宅の家賃については、応能応益制度を取り入れ暫時見直しを進めていくことになっているが、応能応益制度を取り入れていない市町村には、早急に制度を取り入れ、家賃の見直しをするよう要求していくとともに、家賃の滞納を市町村と協議しながら早急に改善していく。

  また、政府の三位一体の改革から、地域の拠点である隣保館の運営費や施設整備費も削減されていく可能性も否定できないことから、隣保館の同和問題をはじめとするあらゆる人権問題の解決に果たす役割の大きさを訴え、削減ではなく、拡充を厚生労働省に求めていくとともに、地方公共団体へも隣保館の活性化を求めていく。



2. 産業基盤の確立と就労対策
 
  同和関係事業者は零細で、かつ、建築・土木関係者が極めて多いという特定の業種に偏った特有性をもっているので、公共事業が年々減少していくこのような状況で基盤を確立することは非常に困難ではあるが、合理化や近代化を促進するとともに、生き残りのため共同化や協業化を進めていく。

  業種転換する場合には、政府が中小・零細業者向けセーフティネットとして実施している各種融資制度の有効活用や各省庁のホームページで最新の情報などを有効利用するとともに、都道府県や市町村と協議しながら、きめ細やかな指導をしていく。

  未就労者に関しては、ハローワークを最大限活用するとともに、規制の緩和により都道府県も就労の斡旋ができるようになったことと、現在様々な雇用対策が実施されているので都道府県と連携を図り、未就労をなくしていく。
  また、専門性を取得するために職業訓練や研修・講座などを有効活用し、就労を確保していく。特に、世界でも類のない高齢化社会に進んでいるため、介護福祉士やホームヘルパーが不足しているため、非常に求人の需要が高いので資格の取得を奨励していく。
  農林漁業者については、付加価値の高いものに移行するとともに、ブランド化を目指し、インターネットなどを活用して販路の拡大を図る。

  なお、本格的に導入された「指定管理者制度」では、すべての公共施設を指定管理者に管理をさせることになっているので、燐保館なども対象になることから、各都道府県本部で設置しているNPO法人の実情に合った公共施設の指定管理者になり、雇用促進ができるよう、都道府県・市町村と協議していく。
  いずれにしても、最新の情報を得るため中央本部は各省庁と、都道府県本部は都府県と緊密な連携を図り、会員に最新の情報の伝達や相談を行うため、都府県本部内に相談業務を確立していく。
  また、就労差別をなくし、安定した雇用を確保するため、厚生労働省が100名以上の従業者を有する企業に設置を求めている「公正採用選考人権啓発促進員」との連携を深めていくと同時に、障害者の雇用をも促進するため、法定雇用率(常用労働者が56人以上の民間企業は1.8%)を下回る企業については、特に積極的に雇用するよう求めていくが、抜本的に就職差別をなくすため、ILO第111号条約の「雇用及び職業における差別に関する条約」を推進し、国内法を整備するよう厚生労働省に求めていく。


3.教育・啓発
 
 教育・啓発については、既に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が制定されており、基本計画も策定実施されているので、この法律を有効活用し、すべての都道府県、すべての市町村に、この基本計画の策定と実施を強く求めていく。
  また、基本計画には企業の役割も明記されていることから、厚生労働省が100名以上の従業員を有する企業に設置を求めている「公正採用選考人権啓発推進員」との連携を深め、企業内の人権研修の充実に努めていくとともに、未設置の企業には、推進員の設置を求めていく。
  奨学資金を扱う日本育英会の独立行政法人化で、名称が日本学生支援機構になり、大学はそのまま日本学生支援機構が取り扱い、高等学校の奨学資金は都道府県に移管された。私どもの運動で創設された奨学資金は学力要件がなく誰もが貸与される制度であったが、残念ではあるが三位一体の改革から廃止になり、都道府県が一般対策として継続していくことになった。一般対策に移行するに当たっては学力要件を撤廃するよう都道府県を指導するように文部科学省に要請していたが、都道府県の財政状況によっては学力要件が残っていることも考えられるので、残っている場合には条件としないよう都道府県に要請していくとともに、これを機会に専門学校についても、対象に加えるよう要請していく。
  また、すべての学校がバリアフリー化され、車イスでも通学できるよう、文部科学省に促進を求めていくと同時に、児童・生徒の人権を侵害する教師の差別言動が少なからず発生していることから、教師に対する人権研修の徹底をも求めていく。

  今後、小・中学校では、地域に開かれた学校を目指すとして、学校評議員制度など保護者が学校運営に直接関与できるようになるので、積極的に関与していく。
  昨年1月に「人権教育の指導方法の在り方について」(第2次とりまとめ)が文部科学省でまとめられ、各学校に配布されていることから、その実施を求めていく。
  特に、カリュキュラムには、最大限の関心を持ち、人権教育が計画的に実施されるよう働きかける。
  同和教育・人権教育と啓発事業は環境改善とともに、同和問題の解決に大きな成果をもたらしたといっても過言ではないであろう。
  結婚差別にみられるように、差別や偏見で不幸な事態になることは大幅に減少してきた。このことは、教育・啓発に担うところが大きく、昭和47年に中学の社会科の教科書に記録され、本格的に同和教育が導入された結果でもある。

  しかし、この授業を受けてきた世代を同和教育第一世代とし、その同和教育第一世代のこどもを同和教育第二世代とすれば、この同和教育第二世代が同和関係者と結婚する場合の親(同和教育第一世代)の態度が、ほんとうの意味での同和教育の成果が問われることになるし、同和問題の解決がより一層進むのか、このままの状態が続くのかを占うことになる。
  その時期が同和問題解決のターニングポイントになり、目前にきていることから、結果によっては、これまでの内容を見直すなど人権教育啓発の一層の充実が求められる。
  また、導入することに賛否が分かれている学校選択制度については、解決しつつある同和問題を逆行させる可能性と、これまでの学校と地域の一体性が瓦解し、児童生徒が減少する地域は崩壊する可能性もあることから、導入には断固として反対していく。



4.人権侵害の処理及び被害者の救済
 
  人権侵害の処理及び被害者の救済については、私ども自由同和会が求めていた、国家行政組織法の第3条委員会としての「人権委員会」の設置を含む「人権擁護法案」が必要不可欠であるので、再出発を図り、是が非でも成立を図らなければならない。
  「人権委員会」が創設されるまでは、平成15年の3月に20年ぶりに改正された「人権侵犯事件調査処理規程」での対応になるが、差別での泣き寝入りは絶対にさせないとの強い気持ちで、「人権侵犯事件調査処理規程」を有効に活用して救済を図っていく。

  また、最近、一部運動団体が部落地名総鑑を発見したと騒いでいるが、高度に発展しているインターネット社会と、同和対策事業で対象地域が以前の面影を残さないほど環境整備が図られた地域、まして混住化が進んだ地域の現状を勘案すれば、部落地名総鑑の持つ意味が以前ほど重大ではなく、当然、取扱についても違いが出てくると思われる。
  同和対策事業が実施される前の劣悪な環境では、対象地域を知れば差別の助長に繋がったが、現在の対象地域を見ても差別心は芽生えないであろう。
  なおかつ、同和問題を少し勉強すれば対象地域には燐保館や改良住宅が建設されていることが分かり、インターネットで県や市町村のホームページで燐保館や改良住宅を検索すれば、対象地域の所在はすぐに判明するし、航空写真や衛星写真で対象地域全体を観ることもできる。
  対象地域に入れば、同和問題を解決するための看板やポスターが目に付くし、人権週間になれば燐保館などに垂れ幕や横断幕などが揚げられ、ここが対象地域ですよと知らせている。

  また、燐保館が行っている交流事業に参加する人達もすべて知ることになる。
  したがって、対象地域の所在をあえて公開する必要はないが、部落地名総鑑を発見しても、差別の助長になると大騒ぎするのではなく、淡々と処理すればいいことで、未だに差別があることの根拠にすることは差別の現状を見誤る危険な所産といわざるを得ない。
  対象地域に住む人達を差別しようとする悪意を持った確信犯的な人は絶対になくならない。そのような人が部落地名総鑑を作成してインターネットに流すなど悪用した場合には、毅然として対処することは当然であるが、今や混住化が進み半数は関係者以外の人達であることを広報することのほうが部落地名総監を無意味にする近道ではないだろうか。

  部落地名総監を作成し悪用することができにくくなる4つの追い風が吹き始めた。その@は、「探偵業の業務の適正化に関する法律」が昨年成立し、差別に繋がる調査ができなくなったこと。そのAは、「戸籍法」の改正案が閣議決定されたので、今国会で成立すれば戸籍を取得することに、身元確認や取得するための正当な理由など制限されることになること。そのBは、「住民基本台帳法」の改正が閣議決定されたので、これも今国会で成立すれば、住民票の取得は家族に限定され、それ以外の弁護士などの場合は正当な理由と本人確認の義務が生じることなどである。そのCは、インターネットの「プロバイダー制限責任法」のガイドラインが改められ、名誉毀損やプライバシー侵害、著作権侵害、商標権侵害などの権利侵害については、これまでより発信者の氏名、住所、電子メールアドレス、情報発信時のIPアドレスなどの情報が開示しやすくなった。

  これで万全とは言えないが、前記したように部落地名総監の価値がなくたってきていることを考え合わせれば、減少していくものと考えられる。

  インターネットのある掲示板で、「今どき、差別されて得になることはあっても、差別して得になることはなにもない」と書き込みがあったが、正鵠を射ていると思われる。

 
最後に
 
  これまでは、差別する側にすべて責任を被せ、差別される側には何も責任はないのだとする論理が罷り通ってきたために、差別される側の問題を取り上げて意識の変革をしようとすると、融和主義だと批判された。
  運動に参加する人間にとって、融和主義と言われることは最大の屈辱であるという雰囲気が、声を大にすることができなかった一つの大きな要因であり、今回の様々な不祥事を生んだ一つの土壌である。
  また、言葉尻を捉え「差別だ」と言われると、思考停止になり、反論しないことも運動体の横暴を許してきた大きな要因でもある。
  昨今の同和団体役員や選考採用された市の職員による不祥事の続出により、同和団体への嫌悪感が一気に深まるとともに、逆差別が蔓延し始めている。このことは、これまでの運動の成果を踏みにじる由々しき問題である。
  このことを対岸の火事にせず、運動にかかわるすべての人が反省すべき事案であり、己を見つめ直し、傲慢になってはいないか、特権意識を持っていないか、特別待遇を望んでいないか、不正行為はしていないか、社会人として恥ずべき行為はしていないか、などを常に己に問い、地域の代表として活動していることを忘れてはならない。

  これからの運動は、行政依存の体質から脱皮し、借りたものは返し、支払う義務があるものは支払うなど、これまでのような横暴・横着は許されない。
  本気で差別を解消していくには、差別される要因がわれわれにあるのなら改善していく努力が求められる。
  そして、自分が住む地域では、どのような差別・格差(結婚差別、就職差別、土地の価格、差別落書き、差別投書、差別書き込み、環境改善、所得、就労形態、失業率、生活保護率、学力と就学、など)が現存するのかを主観ではなく客観的に、かつ、正確に把握して、その問題の是正を図るために、各支部それぞれの方針で運動を展開する、細分化された活動が必要になってくる。

 
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