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昨年は平成28年12月に成立した、「部落差別の解消の推進に関する法律」の第6条に規定する部落差別の実態調査が実施された。
この実態調査は、@法務省の人権擁護機関が把握する差別事例の調査、A地方公共団体(教育委員会を含む)が把握する差別事例の調査、Bインターネット上の部落差別の実態に係る調査、C一般国民に対する意識調査、以上の4項目について実施されたが、この実態調査の結果に関しては、秋に開催する幹部研修会のテーマにして分析していくことにする。
法務省は一年間に法務省が取り扱った「人権侵犯事件」を『「人権侵犯事件」の状況について』(概要)として毎年公表しているが、本年は3月17日に公表された。
この概要にある統計資料(本大会資料に掲載)では、令和元年の同和問題の新規受理件数は、前年の平成30年の92件から一挙に2倍強の221件になっている。
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これまでも、同和関係法が失効期日に近づくにつれ人権侵害の件数が増える傾向があったが、今回も調査が実施されるのに時を合わせたように増加した。
このことは何を意味しているのかを深く考えたい。
「部落差別解消法」の成立で、当初の狙いどおり後退傾向にある人権教育・啓発の中での同和問題の取り扱いに歯止めがかかり、人権教育・啓発で同和問題の取り扱いや位置付けについて、再検討する動きが見られるが、その内容については、これまでのような部落差別の悲惨さだけを教える内容は解決を妨げる結果にも繋がることから、旧同和関係者の青年にも希望が持てるように、私どもが明記している部落差別の現状を反映した内容に改めるよう国や地方公共団体に求めていく。
「部落差別解消法」が成立したことで、一部の団体は法の不足分を補うことを目的として、地方公共団体へ条例の制定を求めての活動が活発化し、それを受け入れ条例を制定する地方公共団体が散見されるが、法案を審議する参議院法務委員会で、どのような調査を想定しているのかの質問に対して、「この法案の下で実態調査を行うというのは、そうした旧同和地区を特定した上で、そこの中の個人の人などを特定した上での調査というのは、全く行う予定ではございません」と、発議者は答弁し、更に、附帯決議においても「国は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するための部落差別の実態に係る調査を実施するに当たっては、当該調査により新たな差別を生むことがないように留意しつつ、それが真に部落差別の解消に資するものとなるよう、その内容、手法等について慎重に検討すること」と、旧同和地区の再指定や旧同和関係者の選別で行政によるアウティングにならぬよう懸念を示していることを再確認すべきである。
また、以前のような個人給付やハード事業を推進する同和対策の復活を目論む一部の団体は、条例制定の要請の際に、平成5年に実施された生活実態調査を要請したと仄聞するが、この生活実態調査を実施するには、現在は法的に存在しない「同和地区」(部落)の再指定と同和関係者の選別が必要になり、平成5年の実態調査でも41,4%と同和関係者が少数になり、現在では地区内の公営住宅の一般開放が進んでいることにより一層混住が進み、旧同和関係者が多数居住するという旧同和地区(部落)の概念が変わりつつあるものを、再指定や選別により、未来永劫、同和地区(部落)、同和関係者と呼ばれ続け、固定化することになるので、時計の針を戻し、同和対策の復活や生活実態調査を可能にする内容の条例制定には、明確に反対する。
都府県本部と各市町村支部は、今後も条例化の動きには注視し、断固として阻止するものとする。
この間、「障害者差別解消法」、「障害者虐待防止法」「児童虐待防止法」「高齢者虐待防止法」「いじめ防止法」「男女共同参画基本法」「ヘイトスピーチ解消法」等々の個別法が制定されているが、被害者の救済措置が十分ではないことから、「人権擁護法案」を合意形成ができる内容に見直し、成立を求め続ける。
「障害者差別解消法」は平成25年6月に制定され、同法第6条に規定する「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」が平成27年の2月に策定公表され、各省庁においても「国等職員対応要領」と「事業者のための対応指針」が作成された後、平成28年4月から施行されたが、今後はこれらに基づく各省庁の各種施策の実施状況を注視していく。
地方公共団体についても、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策の策定と実施を求めるとともに、「職員対応要領」の策定を求めている。大半の地方公共団体は策定済みだが、一部の市町村に遅れがあることから策定を急がせていく。
また、障害を理由とする差別に関する相談や紛争の防止及び解決を図ることと、差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うために「障害者差別解消支援地域協議会」の設置を求めているが、都道府県・指定都市は大半が設置済みだが市区町村は大幅に遅れていることから、この「協議会」が早期に設置されるよう市区町村に求めていく。
障害者の雇用については、平成30年4月から精神障害者の雇用が義務付けられたことで法定雇用率は、国と都道府県は2.3%から2.5%、教育委員会は2.2%から2.4%になったが、国や地方公共団体などは障害者の定義を拡大解釈して雇用していた水増し雇用を行っていたことが平成30年に発覚し、早期に改善を図り雇用を促進した結果、令和元年6月時点での国の雇用は前年の3,902.5人から7,577.0人で、前年の1.22%から2.31%に、都道府県では前年の8,244.5人から9,033.0人で、前年の2.44%から2.61%に、市町村では前年の2万7,145.5人から2万8,978.0人で、前年の2.38%から2.41%に、教育委員会では前年の1万2,607.5人から1万3,477.5人で、1.89%に改善されたが、非常勤が多いので常勤雇用を増やすよう国や地方公共団体に求めていく。
特に、精神障害者を一人も雇用していない地方公共団体があることから、地方公共団体には精神障害者も積極的に雇用するよう働きかける。
民間企業では、法定雇用率(2.0%→2.2%、対象企業を従業員数45.5人以上に拡大)が引き上げられ、令和元年6月1日時点での雇用数や実雇用率(2.11%)も過去最高を更新で、雇用障害者全体では56万608.5人(その内訳、身体障害者は対前年比2.3%増の354,134.0人、知的障害者は6.0%増の128,383.0人、精神障害者は15.9%増の78,091.5人)で対前年4.85%の2万5,839.0人の増になっているが、法定雇用率の達成企業の割合は48.0%で、半数以上の企業が達成していないので未達成企業に雇用の促進を強力に求めていくが、近く2.3%に引き上げられることも考慮しながら働きかける。
また、厚生労働省は「障害者の雇用の促進に関する法律」を平成25年6月に改正し、この改正に基づき、「障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」と「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」を平成27年3月に策定している。
この指針も平成28年4月から施行されており、この指針では、募集採用時や採用後での差別禁止や合理的配慮を定めているので、この指針が守られているかの点検も併せて行っていく。
ノーマライゼーション(共生社会)の観点からのインクルーシブ教育(特定の個人・集団を排除せず学習活動への参加を平等に保障する)システムの推進として、都道府県が特別
支援学校における自立活動の充実を図るため、外部専門家として、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等が348人、医療的ケアのための看護師は1,800人→2,100人)の配置、また、特別な支援を必要とする子供への就学前から学齢期、社会参加までの切れ目ない支援体制整備(1,796百万円→1,919百万円)、学校における交流及び共同学習を通じて障害者を理解するため、「心のバリアフリーノート」(小学生用、中高生徒用)を活用して、心のバリアフリーを促進するなど、「障害者差別解消法」の施行を踏まえ、特別支援教育の充実に向けた予算は増額しているが、更なる予算の拡充を文部科学省に求めていく。
なお、重度障害児が地元の小学校への通学を希望していたが、本人や家族の意向を無視し、特別支援校への就学を決めた川崎市と神奈川県を訴えた裁判の判決が本年の3月
18日にあり、この地元の小学校への通学を求めた訴訟は請求を棄却されたことで、インクルーシブ教育の後退も予想されることから、どの程度の障害児までが一般校に通学できるのかを検討したい。
虐待については、「障害者虐待防止法」では虐待行為者の範囲を、養護者と障害者福祉施設の従事者及び障害者を雇用する事業主としており、特別支援校や特別支援学級で体罰が表面化している中、虐待の温床になっている病院や学校を加えるよう政府に働きかけるとともに、都道府県では「障害者権利擁護センター」を、市町村では「障害者虐待防止センター」の設置が定められているので、都道府県と市町村に通報状況や対応上の問題などを確認する活動を行う。
児童の虐待については、平成12年5月に成立した「児童虐待の防止等に関する法律」や「児童福祉法」の度重なる改正から、虐待の定義や通報義務の拡大、警察に対する援助要請、出頭要求の制度化、裁判所の許可を得ての立入調査と臨検・捜索、立入の拒否での罰金の引き上げ、地方公共団体での要保護児童対策知的協議会の設置等、児童相談所や福祉事務所の権限を強化してきているが、平成29年の4月からは裁判所の許可を得る立ち入り調査や臨検・捜索が迅速・的確な対応ができるよう要件が簡素化されたにも拘らず、悲惨な事件が続いたことから、「児童福祉法」と「児童虐待防止法」の改正案が令和元年6月19日に成立した。
この改正では、児童虐待防止対策の強化を図るため、児童の権利擁護、児童相談所の体制強化と関係機関間の連携強化等が図られ、しつけとして体罰を容認する風潮がある親権者等による体罰の禁止が明記された。
本年の2月にまとめられた指針「体罰等によらない子育てのために」〜みんなで育児を支える社会に〜では、
・言葉で3回注意したけど言うことを聞かないので、ほほを叩いた
・大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
・友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
・他人のものを取ったので、お尻を叩いた
・宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった
・掃除をしないので、雑巾を顔に押しつけた
以上の6項目の例も体罰に挙げ、虐待の定義として、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待としている。
これら体罰や虐待を発見した場合には、通告義務があることから、速やかに都道府県の設置する福祉事務所か児童相談所に通告し、体罰や虐待の防止に努めるとともに、私どもも体罰等によらない子育てに努める。
体罰の根拠とされる民法第822条の親権者の「看護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる」との条文も2年を目途として見直すことも付記された。
なお、令和元年の1年間に全国の警察が摘発した虐待事件は1,972件(前年比42.9%増、その内無理心中を含め死亡した子どもは前年より18人増の54人)で、被害を受けた子どもは1,991人(前年比42.8%増)になり、前年より警察から児童相談所に虐待を受けた疑いがあるとして通告された18歳未満の子供は9万8,222人(前年比22.4%増)と最高を記録している。
学校での「いじめ」については、平成25年6月に「いじめ防止対策推進法」が制定され、いじめの定義の拡大や明確化されてきたが、未だに「いじめ」による悲惨な自殺が続いていることから、「いじめの防止等のための基本的な方針」を改訂するとともに、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」が策定された。基本方針の改定では、発達障害を含む障害のある児童生徒、性同一性障害や性的指向・性自認(LGBT)に係る児童生徒、東日本大震災により被災した児童生徒等については特に配慮が必要と明記され、インターネット上のいじめが重大な人権侵害に当たり、被害者等に深刻な傷を与えかねない行為であることを理解させる取り組みを行うことも明記された。
また、いじめの解消は、被害者に対する心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)が止んでいる状態が3か月以上継続しているとした。
新たに策定された「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」では、「基本方針」(平成25年10月)、「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」(平成26年7月)、「不登校重大事態に係る調査の指針」(平成28年3月)が策定された後も、学校の設置者又は学校において、いじめの重大事態が発生しているにもかかわらず、「法」、「基本方針」及び「調査の指針」に基づく対応を行わないなどの不適切な対応があり、児童生徒に深刻な被害を与えたり、保護者等に対して大きな不信を与えたりした事案が発生していることを踏まえ、「ガイドライン」を策定したとしているので、今後はいじめによる悲惨な出来事が起こらないように、各学校に設置されている「いじめの防止等の対策のための組織」の点検と、スクールカウンセラーの全公立小中学校27,500校への設置、24時間通話料無料の子供SOSダイヤルの実施、不登校児童生徒に対する支援推進事業(67地域)、いじめを含め、様々な悩みを抱える児童生徒に対するSNSを活用した相談体制構築の支援(30箇所)、スクールソーシャルワーカーのすべての中学校区への設置(10,000中学校区)、いじめ・不登校対策のための重点配置(500校)、貧困対策のための重点配置(1,400校)・虐待対策のための重点配置(1,000校)、教育支援センターの機能強化(250箇所)、スーパーバイザーの配置(67人)がされるが、今後役割に期待が持てるスクールロイヤーは、一部の地方公共団体で取り入られ、文部科学省も全国に300名を配置するとしていたが、予算措置がないことから、設置を文部科学省に求めていく。
また、いじめ防止のため道徳が重視され、道徳が正式な教科になり、小・中学校は全面実施になっていることから、差別を「しない、させない、見逃さない」ことは最高
の道徳だと思われるので、道徳も最大限に活用するよう求めていく。
性同一性障害や性的指向・性自認(LGB-T)に係る児童生徒については、既に、平成27年4月に「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」として、学校における支援の実例を上げたものをまとめているが、現場の教職員からより指導し易いものをとの要望を受け、平成28年4月に教員向けとして「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」をまとめ、各学校に配布されているので、その実施状況や問題点等を確認する。
一方、女性の人権については、平成13年10月から施行された「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV法)によって、平成14年4月からは「配偶者暴力相談支援センター」が各都道府県に設置され、業務を開始しており、平成19年7月の改正により、市町村にも配偶者暴力相談支援センターの設置が努力義務となったが、ほとんどの市町村は設置していないことから、その設置を市町村に求めていく。(令和元年10月1日現在、全国287施設で、その内市町村が設置する施設は114施設)なお、この支援センターへの相談件数は年々増加しており、平成30年度は11万4,481件で、令和元年に警察が対応したものでも8万2,207件で前年度より4,725件(前年比6.1%増)増えており、加害者への指導や警告も前年より4,347件増の5万5,519件になり、検挙件数も前年より73件増の9,090件で、いずれも法施行後最多となっている。
また、これまで身体に対する暴力を受けたものに限り、保護命令を申し立てることができたのに対して、平成20年1月からは生命・身体に対する脅迫を受けた者についても、身体に対する暴力によりその生命・身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合には、保護命令を発することができることとなったほか、被害者への接近禁止命令の実効性を確保するため、接近禁止命令の発令されている間について、被害者の親族等への接近禁止命令も発することとされ、さらに、被害者への面会の要求や無言・夜間の電話等を禁止する電話等禁止命令も新設されたことで、平成26年の2,576件をピークに令和元年では前年の1,726件よりやや減少し1,663件について保護命令が発令された。
よって、少しでも危害を受ける可能性がある場合は、積極的に保護命令を活用して被害を防いでいく。
なお、「ストーカー規制法」による相談件数は、令和元年では2万912件で、前年より644件減少しているが、つきまといなどを禁止する禁止命令は前年より218件増の1,375件になり、864件が検挙されている。
この「ストーカー規制法」は平成25年6月に改正され、電子メールを対象に加えることや禁止命令等を出すことができる公安委員会の処置が拡大され、国及び地方公共団体は民間の自主的な組織活動の支援のための体制整備に努めることも明記されたが、相談窓口すら設置していない市町村が多数存在することから、その体制整備を都道府県・市区町村に求めていく。
今後もDVやストーカー被害者の増加が予想されるが、緊急な避難場所としてのシェルター(一時避難所)が不足しているので早急に設置するよう市町村に求めていく。
また、民間シェルターは、平成27年には125あった運営団体が厳しい財政事情から、平成30年では107運営団体に減っていることから、新事業の費用を負担することで減少
を抑えるとしているが、大胆な財政支援を行うよう内閣府に求めていく。
平成27年の8月に成立し、平成28年4月に施行された「女性活躍推進法」は、女性の地位の向上のため従業員301人以上の企業、国や自治体に女性管理職の割合や採用比率などを数値目標にすることなど、取り組む内容を平成28年の4月1日までに、企業は行動計画を国や地方公共団体は推進計画を策定して公表することを義務付けるものであるが、市町村での推進計画の策定が大幅に遅れているので、策定していない市町村に対し、策定を要請していく。
なお、令和元年5月29日に改正案が成立したことで、これまでの従業員301人以上の企業が義務であった行動計画の策定が、令和4年4月からは101人以上も義務になるので、対象企業に行動計画の策定を求めていく。
「男女雇用機会均等法」により、セクシャルハラスメント(性的言動)は防止の措置を講じることになっているが、平成28年3月に「均等法」が改正され、マタニティーハラスメント(出産・妊娠)も平成29年1月からは防止の措置を講じなければならなくなったが、令和元年5月29日には「女性活躍推進法」と「労働施策総合推進法」の改正案が成立したことで、パワハラ(上司などの優越的な関係を背景に、業務上必要な範囲を超えた言動で働く環境を害すること)も防止の措置を講じることになり、相談窓口の設置も求められることから、その設置を要請していく。(301人以上の企業は令和2年6月1日施行、101人以上の企業は令和4年4月1日施行)また、政治の分野でも、「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が平成30年の5月に成立しているので、今年の統一地方選挙から対象になることから、政党に女性の候補を増やすよう求めていく。
私どもも、女性の社会参加を促し、働きやすい環境づくりに努めていく。
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住環境整備については、近隣地域との差異がないかを点検しつつも、高齢者・障がい者・妊娠している女性・子どもなど、ハンディキャップがある人たちが自由に社会に参加できる活力ある地域にするため、バリアフリーは当然のこととして、ユニバーサルデザインの用具をも活用する「人権のまちづくり」を視野に入れた取り組みを展開し、ノーマライゼーションを達成する。
バリアフリーの基準としては、介助がない車イスでどこへでも自由に、安心・安全・快適に移動できるものとする。
バリアフリーについては、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律」(通称、ハートビル法)と「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(通称、交通バリアフリー法)を統合した新法「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(通称、バリアフリー新法)
が、施行されているので、この「バリアフリー新法」と平成28年の4月から施行される「障害者差別解消法」を積極的に活用してバリアフリーの建築物を増やしていく。
老朽化した改良住宅・公営住宅の建替えを行う際については、空き家の集約化を図り、集約化で空いた土地を民間に払い下げるなど、空き地の有効活用で混住化を促進する。
また、定期借地権などを活用して持ち家化を考慮しつつも、払い下げを積極的に求めて、これを機会に「人権のまちづくり」を具現化する総合計画の策定を市町村に求めていく。
改良住宅・公営住宅の空き家がある場合には、混住化を促進するためにも、一般公募制度を活用し、また、若年層の流入を促すために、就学前の子どもを持つ世帯とか新婚家庭や妊婦については優先入居や割引の導入などの工夫を凝らして空き家をなくしていくとともに、高齢者の孤立死を防止する手立てを講じるよう、市町村に要求していく。
なお、公営・改良住宅の入居者の選定や管理を、未だに地区の自治会や同和運動団体の役員に任せていることは、不正行為や混住化を妨げる温床になることから、公営・改良住宅の管理・運営を市町村が行うよう、市町村に強く要請していく。
批判の対象になっている改良住宅・公営住宅の家賃については、応能応益制度を取り入れ、暫時、見直しを進めていくことになっているが、応能応益制度を取り入れていない市町村には、早急に制度を取り入れ、家賃の見直しをするよう要求していくとともに、家賃の滞納を市町村と協議しながら早急に改善していく。
地域の拠点である隣保館については、「部落差別解消法」が成立したことで運営費の削減や廃止は当分の間回避できるものと思われるが、これを機会にあらゆる差別や虐待などの人権侵害や生活困窮者等が相談でき、また、広く市民も利用できる公的施設にすることで交流が生まれ、また、同和対策で住環境が改善された同和地区を眼にすることで、旧同和地区の心象を変えていくことにもなるので、障がいのある人もない人も利用し易い施設にするために、厚労省の改修費補助を積極的に活用してバリアフリー化をも進めていく。
また、指定管理者制度を活用して活性化を図ることも考慮する。
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旧同和関係事業者は零細で、かつ、建築・土木関係業者が極めて多いという特定の業種に偏った特有性をもっているので、公共事業が年々減少していくような状況で基盤を確立することは非常に困難ではあるが、合理化や近代化を促進するとともに、生き残りのため共同化や協業化を進めていく。
業種転換する場合には、政府が中小・零細業者向けセーフティーネットとして実施している各種融資制度の有効活用や各省庁のホームページで最新の情報等を有効利用するとともに、都府県や市町村と協議しながら、きめ細かな指導をしていく。
未就労者に関しては、ハローワークを最大限活用するとともに、規制の緩和により都道府県も就労の斡旋ができるようになったことと、現在、様々な雇用対策が実施されているので都道府県と連携を図り、未就労をなくしていく。
平成27年4月から「生活困窮者自立支援制度が始まっているので、この制度を積極的に活用していく。
また、専門性を取得するために職業訓練や研修・講座などを有効活用し、就労を確保していく。特に、世界でも類のない高齢化社会に進んでいることで、介護福祉士やホームヘルパーが不足しているため、求人の需要が非常に高くなっていることから資格の取得を奨励していく。
農林漁業者については、付加価値の高いものに移行するとともに、ブランド化を目指し、インターネットを活用して消費者との直販や販売店との直取引など販路の拡大を図っていく。このことは、畜産、園芸でも同様であり、漁業については、養殖なども検討していく。
なお、本格的に導入された「指定管理者制度」では、すべての公共施設を指定管理者に管理をさせることになっているので、隣保館なども対象になることから、各都府県本部で設置しているNPO法人の実情に合った公共施設の指定管理者になり、雇用の促進ができるよう、都道府県・市町村と協議していく。
いずれにしても、最新の情報を得るため中央本部は各省庁と、都府県本部は都府県と緊密な連携を図り、会員に最新の情報の伝達や相談を行うため、都府県本部内に相談業務を確立していく。
また、就職差別をなくし、安定した雇用を確保するため、厚生労働省が100名以上の従業者を有する企業に設置を求めている「公正採用選考人権啓発推進員」との連携を深めていくと同時に、障がい者の雇用をも促進するため、法定雇用率(常用労働者が45.5人以上の民間企業は2.2%)を下回る企業については、特に積極的に雇用するよう求めていくが、抜本的に就職差別をなくすため、ILO第111号条約の「雇用及び職業における差別に関する条約」を批准し、国内法を整備するよう厚生労働省に求めていく。
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教育・啓発については、既に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が制定されており、国においては基本計画も策定実施されているが、「部落差別解消法」の成立から、この2つの法律を有効活用し、すべての都道府県、すべての市町村に、この基本計画の策定と実施を強く求めていくと同時に、現状に即した内容になっていない場合には見直しを強く求めていく。
また、基本計画には企業の役割も明記されていることから、厚生労働省が100名以上の従業員を有する企業に設置を求めている「公正採用選考人権啓発推進員」との連携を深め、企業内の人権研修の充実に努めていくとともに、未設置の企業には、推進員の設置を求めていく。
高等学校の授業料の無償化は、平成26年度からは所得制限(年収約910万円)が取り入れられ、国公私立を問わず、高校等の授業料の支援として、月額9,900円が就学支援金として支給される制度に変更され、私立高校の場合には、令和2年4月からは世帯の年収590万未満は39万6,000円が支給され実質無償化になる。
大学・短期大学の奨学金は、令和2年4月から新制度になり、授業料の免除・減額と給付が本格的に始まるが、住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯とし、をいずれも低所得世帯か対象になり、学力要件もある。
以上はいずれも上限額で世帯収入によって、〜270万円は上限額、〜300万円は上限額の2/3、〜380万円は上限額の1/3になる。
日本学生支援機構の貸与型の奨学金はこれまでと同様に、学力要件がある第1種(無利息)と、学力要件がない第2種(利息付)とがあり、第2種の場合は毎月貸与する金額が、2万円〜12万円(1万円刻み)と選択できるようになっているが、令和2年度予算要求では、有利子83万3千人(6万8千人増)、無利子51万8千人(4千6百人減)になっている。なお、給付型奨学金は第1種の奨学金との併用は可能になっている。
また、1種・2種の奨学金と合わせて、入学の時に必要な資金として、入学時特別増額も、10万円・20万円・30万円・40万円・50万円と、借りることができる。
日本学生支援機構の奨学金とは別に、国の教育ローン(日本政策金融公庫)は、利息は高いが350万円まで借りることができる。
また、市区町村の社会福祉協議会でも、低所得世帯を対象に生活福祉資金貸付制度として教育支援資金があり、就学支度費が50万円以内、教育支援費が大学で月額6万5千円以内、短期大学等で月額6万円以内を無利息で借りることができる。
これら奨学資金制度を活用し、大学・短期大学の進学率の向上を図っていくと同時に、所得の格差で教育の格差が生じないよう、大阪市が実施している塾代補助である「教育バウチャー制度」を文部科学省に求めていく。
なお、低所得で奨学金の返済ができず滞納者が増加していることから、「所得連動返還型制度」や「返還免除規定」の導入を求めていたが、平成24年度からは「所得連動型返還型無利子奨学資金制度」(第1種)が導入され、平成29年度からは「新たな所得連動型無利子奨学資金制度」(猶予年限特例)が導入されたが、これは第1種(無利子)の奨学資金のみが対象で第2種(有利子)の奨学資金は対象外なので、第2種(有利子)の奨学資金も導入するよう要請していく。
また、「障害者基本法」が改正され、インクルーシブ教育が明記され、また、平成28年4月から「障害者差別解消法」が施行されたことで、すべての学校でバリアフリー化が進み、車イスでも通学できるようになると思われるが、文部科学省により一層の促進を求めていくと同時に、児童・生徒の人権を侵害する教師の体罰や差別言動が少なからず発生していることから、教職員に対する人権研修の徹底をも求めていく。
平成20年3月に「人権教育の指導方法の在り方について」(第3次とりまとめ)が、平成21年10月には「人権教育の推進に関する取組状況の調査結果について」が文部科学省でまとめられ、各学校に配布されていることから、その実施を求めていくが、その際には、カリキュラムには最大限の関心を持ち、人権教育が計画的に実施されるよう働きかける。
また、導入することに賛否が分かれている学校選択制度については、旧同和関係者が多数在籍する学校を敬遠するなど、解決しつつある同和問題を逆行させる可能性と、これまでの学校と地域の一体性が瓦解し、児童生徒が減少する地域は崩壊する可能性もあることから、導入には断固として反対していく。
なお、近年各地で始められた小・中一貫教育については、「学校教育法」が改正され平成28年4月から施行された。その学校の名称は「義務教育学校」になることから、旧同和関係者が多数在籍する学校を、「義務教育学校」にし、交流を深めて同和問題の解決に
繋げていく。
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国家行政組織法の第3条委員会としての「人権委員会」が創設されるまでは、平成15年の3月に20年ぶりに改正された「人権侵犯事件調査処理規程」での対応になるが、差別での泣き寝入りは絶対にさせないとの強い気持ちで、「人権侵犯事件調査処理規程」を有効に活用して救済を図っていく。
多発する学校でのいじめ問題を始めとする様々な人権問題に対処するため、平成25年度からは全国の法務局に、企画担当委員として人権擁護委員が常勤する人権擁護体制の強化が図られているので、積極的に人権救済を行っていく。
また、「人権擁護法案」と「人権委員会設置法案」のいずれもが、言論や表現の自由を規制するものだとの批判が巻き起こり、結果的に成立に漕ぎ着けないでいるので、国民の支持が得られるようにするため、法案に記述する人権侵害の定義を誰もが分かり易いものに見直す作業を開始する。
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私どもは、昨年からLGBT(性的指向と性自認)と性的マイノリティのそれぞれを頭文字で表す呼称を、Tのトランスジェンダー(戸籍上の性別と異なる性別で生きている人。または戸籍上の性別と異なる性別で生きたい人)とLGBを分けて、LGB-Tと表現しているのは、トイレにしても制服にしてもLGBの人達には何ら不都合はなく、配慮が必要なのはTの人達だけで、LGBの人達は日常生活を営むことに何ら違いや不都合がないことで、一括りにするよりも分けて表現する方が分かり易いとの支持が多いからである。
ダイバ-シティ(多様性)&インクルージョンと(包括)称し、国及び地方公共団体や企業での取り組みが進みつつあるが、大半の当事者はカミングアウトとは無縁な生活を営んでいるのが実情で、地方公共団体や企業での各種制度はカミングアウトが前提になっているが、同和問題と同じでカミングアウトをすれば好奇の目に晒され、差別や偏見に遭遇する可能性があるのでカミングアウトする人は少ないと思われる。 |
私どもは、LGBT理解増進会が提唱するカミングアウトをしなくても当事者が何の障壁もなく社会生活が営める社会の実現が最も望ましいと考える。
制度の拡充も必要なことだが、無理解からの差別・偏見をなくしていくことが最も必要であり、緊急を要するものであることから、一日も早く「LGBT理解増進法案」が成立し、LGB-Tを理解するための理解増進教育・啓発が全国遍く実施されるよう、LGBT理解増進会とともに、強力な運動を展開する。併せて、人権侵害の被害者を簡易・迅速・柔軟に救済を図る目的の「人権委員会」の設置を中心にする新たな内容の「人権擁護法案」が成立できるよう自由同和会の総力を挙げて取り組むものとする。
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